Nov 11th 10
住生活グループは事業会社5社を統合、来春すべての事業にLIXIL(リクシル)を冠すると発表。そして、LIXILの知名度を一気に上げることを期待し、横浜ベイスターズの買収を試みたが結果的に断念した。
おそらくLIXILへのブランド変更は、事業ごとに時間をかけ段階的にせざるを得なくなったと推察する。もっとも、この顛末は、結構マスコミが取り上げたため、住生活グループの認識は飛躍的に高まったはずだ。
20数年前、オリエントリースがオリックスに社名変更した直後、球団買収により飛躍的に知名度が上がったことを思い出す。球団買収は、確かに話題性に富み、買収後も名称やロゴの露出機会は頻繁で、新ブランド導入時のブランド戦略としては王道と言っても過言ではない。
しかし、社名変更直後で認知度がきわめて低かったオリックスと、住生活グループの事情は全くちがう。住生活グループ傘下の各事業ブランドは、トステム、INAX、サンウエーブ、東洋エクステリア等、すでによく知られたブランドばかりである。
こうした資産価値のあるブランドを捨て、長期的に統合ブランドを育成する戦略を選択する企業グループが、最近増えているように思う。
流通グループのイオンも、ジャスコ、マックスバリュー、サティ、マイカルなどをイオンに統合する予定だそうだ。
PANASONICグループからも近々SANYOブランドが消える。
いずれも、長期展望に立った事業と組織のビジョンや戦略が背景にあることは間違いないと思われるが、失う資産価値と新たな投資の引き替えにもたらされる価値を読み切ることは大変困難だ。英断を下す経営者の心の内はいかばかりかと思う一方、こうした思い切ったブランド資産の集中と選択で、コミュニケーション費用の集約化と低減化を図りブランド価値を高める、といった経営判断は、到来する事業環境の厳しさを如実に物語るとともに、ブランド戦略の向かう先を示唆していると痛感する。
ブランド戦略はますます重要度と困難さを増大しつつあるといえそうだ。
「CI・ブランディング」一覧へ